茶菓御膳の宴



今日はお庭の美しい有形文化財の古民家で、
日本茶と和菓子を輪島塗の漆器でいただく「茶菓御膳の宴」に参加してきました。

メニューは和菓子薫風店主のつくださちこさんと、
Kちゃん(八女茶くま園のオーナー)がこの日のために作ったオリジナルコース。
とっても贅沢。

 和菓子をコース料理のようにいただく、というのがテーマで
6種類の和菓子と6種類のお茶を振る舞っていただきました。

  和菓子とはいえ6つになればかなりのボリューム…
(お昼に鰻食べちゃったし)食べきれるか不安だなぁ、 
なんてあまつさえ思っていたのですが、あっという間に完食。 笑

茶道を辞めて3年、和菓子を食す機会がめっきり減ってしまっていたけど、
和菓子の美味しさを再認識しました。
体重増は確実だけど、明日からダイエットで。ね。

Kちゃんが淹れてくれたお茶とも相まって、すすすっと沁み渡ってきました。

お茶は(お庭が美しい背景を背に)私たちゲストの目の前で用意してくれて、
お菓子は一品ずつテーブルに運ばれます。

お茶とお菓子、器のお話を楽しみながら、
ゆったりとした気分でおいしくいただきました。

こういうのんびりした時間を過ごすのが、
最近は本当に幸せだと感じるようになりました。

またセンスの良い輪島塗の漆器の数々にも心奪われました。
 軽くて繊細、かつ使い勝手の良い輪島塗の漆器。 和食はもちろん洋もいける…と、
何を盛り付けようかワクワクする度数が高くてあれこれ妄想が膨らみ、
同席の方とも盛り上がりました。(実際に作れるかは置いといて、笑)

漆器…実家にはあるのですが、
東京の家には持ってきてなくて合羽橋まで探しに行ったくらい。
お料理が上達したら何点か購入したいなぁと思います…。笑 

最後に茶菓御膳のお献立!

 ・シャンパングラスに入った冷たい緑茶に花を浮かべたウェルカムティー
 ・伝統本玉露のすすり茶と善哉
 ・八十八夜摘みの煎茶と餅菓子盛り合わせ 
・和紅茶のミルクティーと浮島 
・その場で煎じた焙じ茶と蕎麦実の茶巾
 ・胡麻醤油のクッキーは、日本酒とマリアージュ♡ 
・奥八女産の抹茶と、上生菓子 


フェルディナント・ホドラー展


フェルディナント・ホドラー展に行ってきました。
スイスと日本、国交樹立150年を祝う記念の展覧会だそうです。

興味深い画家でした。
展覧会で初期から晩年の作品が見事展示されているので、ホドラーの人生を垣間見ることができたように思います。

ホドラーは生涯を通してスイスに暮らした人。
同じ時期の画家や彫刻家達(同じスイス出身ならばクレーやジャコメッティ)が、
パリで活動の場を広げていたのとは対照的。

幼い頃に父を失くし、生きるために絵を描いてきた画家。
貧困層の現状を訴えるかのように、綺麗でない絵も書き続けた画家。
女性遍歴も多様。晩年は20も歳が離れた女性と結婚し、でも彼女は末期の癌で…
美しさの絶頂にあるあ彼女を描いた作品と、その後相反するように描かれた「死」そのものの作品は特に印象的でした。

ホドラーの絵画に同時期の印象派のような明るさや快活さはなく、
どこなく陰鬱でどろりとした感情が沸き起こるようなそんな絵が多くありました。
エゴン・シーレの絵が醜くもなぜか人を惹きつけて止まないのと同じように、
ホドラーの作品にもそうした魅力がありました。

ポスターにはスイスの風景画が使われていて、
風景画は明るい色調でそれは素直に「美しい」と思える作品でした。
淡い、淡い世界観。澄んだ空気や透き通るように美しい湖、空、静寂。
それでも作品を見ていくうちに、そうした風景画と相反するように描かれた人物画の方に心を奪われました。
ホドラーの真骨頂は人物画でこそ発揮されるんじゃないか。
感情を引きずり出される、揺さぶられる、そんな思いです。

アートは、同じ絵でも見るたびに違った感情が沸き起こる。
それが本当に面白い、と思います。
自分と向かい合いたいとき、またホドラーの絵画を見るだろうと予感しました。

図録を買ったもののまだ読む時間が取れないので、せめて感じたことだけでもとブログを書いています。
また、図録を読み終わった上で改めて更新するかもしれません。



ヴァロットン展


気付いたらこのブログ、1年以上更新していませんでした。
自分でもびっくり。何気なくアクセス解析を見たら、
検索:ガンダムUCで来てくださっている方が非常に多く、震え上がりました。
自分のブログでガノタ人口の多さを実感させられる日が来るとは。

1年更新していない間に、
ニューヨークに行ったりパリに行ったりしていました。
去年、国立美術館でもみた貴婦人と一角獣のタペストリー
実際のクリニュー中世美術館でも見ることができたので、またブログ書いていけたらいいな、と。



ヴァロットン展と攻殻原画展に行ってきました。
最近の中でナンバーワン画家でした!(知らない画家だったのでなおさら)
本当に行ってよかった。
ヴァロットンは、女性と妻の家族に対して恨みがあるのかと思うくらいねじれてる絵を描くところが面白かったです。
初期から晩年までの自画像の技術の高さに相反してけっこう醜め?に描かれる女性像。いや醜いっていうのは違うかも。
ぶっちゃけ言うと、ヴァロットンの描く女性って怖いんですよ。



視線が定まってなくて怖い。


表情とポーズ、何もかもが怖い。(たぶん妻)


なんか良く見たら女性の皮膚がどことなくどす黒いんですよね。
このあとヴァロットンと同じ時代に活躍した画家達の展示もあったんですけど、
そこの絵を見て「生きてる!」と軽く衝撃を受けました。
肌の透明感と光彩で、女性をどう捉えているかわかるなぁと。


ヴァロットン、自画像含め男性は正面から描かれるのに対し、
女性は後ろ姿(しかもただならぬ陰鬱さ)を好んで描いているところからも、
女性に対して並々ならぬ負の感情を抱いているようでした。
もうこうの時点で疑惑と興味が出てきますよね、この人の人生に何があったんだろうって。


顔が塗りつぶされているかのような女性と、


ホラーなオーラ全開の後ろ姿の女性。
一言で言うとまじ怖い。


ドミニク・アングル「トルコ風呂」

また話は変わりますが、ヴァロットンはアングルの「トルコ風呂」を見て
感動のあまり涙まで流し、多大な影響を受けたそうです。
うん、アングルの背中・お尻ってすっごく綺麗だもんね。
これ以上裸体をなめらかに表現できる人はいないんじゃないかって、いつ見てもうっとりします。


ヴァロットン「臀部の習作」

はい。
にも関わらず、こんな怖すぎる尻を描いちゃう理由は一体。
一緒に行った友人も「こんな怖い尻の絵はじめて見た」と驚愕していて、この尻の絵の存在感ったらなかったです。
行ってない人は素通りなんかせず、ぜひこの尻の絵を見て欲しいです。


世界一怖い尻の絵。

少なからず女性に幻想を抱く画家が多い中で、
「今、ハイパーリアリズム追求中だから」とシンプルな理由でこの尻を描くヴァロットン。
「女性って所詮ただ肉塊でしょ」みたいな様子が伺えて大変興味深かったです。




「赤い絨毯に横たわる裸婦」


でも女性の後ろ姿を好んで描いたことと言い、(怖いけど)尻の絵も多数あったことと言いかなりのおしりフェチの人だったんでしょうね。特に「赤い絨毯に横たわる裸婦」は「見よ、これが俺の理想とする尻だ」みたいな気迫があって好きでした。これはくびれからお尻にかけてのボリューム感のあるラインはもちろん、手先足先から漂う色気が素敵、ポーズも。





あとは不仲だったという妻の実家の様子を描いた作品が露骨すぎてイチイチ笑えました。
上の絵は妻の実家の人達を描いた絵なんですよね。(ポーカーをしているところ)
あぁ、もうこの決定的な距離感(笑)
そしてあえてと思われる壁の線の歪み。(気になる!)
ポーカーに参加していないヴァロットンが哀れに思えてきます。
とても妻の実家とは思えない。他人レベル。

妻の実家がヴァロットンの大パトロンだったというのにこんな扱いでよかったのか。

自画像や男性像・ハイパーリアリズム期であれだけの技術力を発揮しながらこれを描いたという力の使いドコロが好感を持てました。素直にもほどがある。



あとこれは家族の食事風景なんですよね。不穏すぎる。
そもそもヴァロットン自体が後ろ姿なのがなんかもう…



この少女(妻の連れ子)に目が行きがちだと思うんですけど



ここにもいますからね怖い人。目!パン!手!怖すぎる。



何らかの理由があって女性、そして妻の実家の描き方があんなにこじれちゃってるけど、
ヴァロットン、それがズバ抜けた構図力を持って作品を完成させてるのがすごいと思いました。
妻の実家の人達の絵だって、構図だけであの他人感を演出してるんだもんね。すごい。
木版画もかなりの枚数展示してあったけど、構図の素晴らしさが目立ってました。

友人曰く「事象を単純化する力もすごい」と。


(木版画ではないですが)リアリティのある人物像を描いた上での背景のベタ塗りも構図がすごくシンプルでおしゃれだと感じたし、計算された美を感じました。初期から晩年を通してどの作品も構図の面白さ、見応えありました。




「竜を退治するペルセウス」


後期の作風はもうほとんどシュルレアリスムになってました。

「あえて古代神話に挑戦することで画壇に反旗を翻した」みたいにかっこよく解説に書かれてましたけど、良く見てください。
これ竜ですからね。
ワニじゃないですからね。


ワニの面影を多分に残す竜

そしてここでも強調される(私の視点がもうそこにしか行かないからかもしれませんが)ペルセウスの尻が、なんかもう…

たぶんヴァロットンは竜を竜らしく描こうとか、ペルセウスを英雄らしく描こうとか、アンドロメダを神秘化して美しく描こうとか全くなかったんでしょうね。
男女の葛藤を表現した作品らしいですから。


でもこんな現実的なアンドロメダはじめて見ました(笑)

ちょっとアンドロメダが気になったので…
他の作家のアンドロメダを取り上げますと…


エドワード・ポインター「アンドロメダ」




ギュスターヴ・モロー「ペルセウスとアンドロメダ」

やっぱり大好きなモロー。麗しいですね。
モローの描くアンドロメダは理想の女性そのものです。


ギュスターヴ・ドレ「アンドロメダ」


ルーベンス「ペルセウスとアンドロメダ」


フランソワ・ルモワーヌ「ペルセウスとアンドロメダ」

以下アンドロメダwikiより。

"アンドロメダーは母カッシオペイアがその美貌が神に勝ると豪語したことから、怒った神々によって怪物(化け鯨)の生け贄とさせられようとして、波の打ち寄せる岩に鎖で縛りつけられた。そこを、ゴルゴーンの三姉妹の一人、メドゥーサを退治してその首級を携えてきたペルセウスが通りかかった。ペルセウスは、怪物にメデューサの首を見せて石にし、アンドロメダーを救出した。アンドロメダーは後にペルセウスの妻となった。その後、アテーナーが星座として天に召し上げた。"


ヴァロットンのアンドロメダ。

他の古代神話の絵も、おお!?とちょっとテンションが上がるくらいゲスくてよかったですよ!!こんな下卑た顔した神様見たことない。

でも時代が彼に追いついてなくて酷評されまくったというからそれには少し同情しましたが…。シュルレアリスム全盛期に活躍していれば、もっともっと面白い作品を残しただろうに。(もっと見たかった)

ヴァロットン、作品も画家個人も好きになりました。
余談になりますが私、一人で美術館に行くことが好きなので普段は大体一人で行くのですが、今回は(密かに尊敬する)絵を描く友人が誘ってくれたので、独特の解説と小噺を聴きながらの美術館巡りだったので楽しいことこの上なかったです。

アートを堪能しつくせた一日、もう最高の盆休みでした。

最後に、
安定のヴァロットンのイケメン自画像。








ヴァロットン展
〜2014.9.23
三菱一号館美術館